Q&A:日本刀なんでもQ&A

薬師寺や中鉢美術館などに寄せられたご質問から抜粋してお答えします。
類似する質問については質問内容を要約し、まとめてお答えさせていただきます。

※Q&Aは順次更新致します。


日本刀なんでもQ&A

【4/18更新】

Q.小夜左文字は、薬師寺では公開しないのですか?(質問者多数)

A.

小夜左文字は重要文化財ですので、現在の薬師寺の展示環境では難しいかもしれません。
今後、重要文化財を展示できる環境が整えば実現することもありえます。

Q.二代目 長曽祢虎徹の真偽の答えは?(質問数多数)

A.

沸出来の方が本物です。
匂出来の方は、江戸時代末期の新々刀です。
元々あった銘を削ってから長曽祢虎徹の銘を入れた後銘です。加工は大正時代以降で、茎に新しい錆が付いています。
茎の錆からNO3イオンが検出されたことから、硝酸による錆付をして古く見せていることがわかります。
鉄は溶鉱炉で作られた洋鉄が原料であり、硫黄やリンなどの不純物も和鉄よりもかなり多いものでした。

Q.展示されている徳川家の鎧について、新しく作ったものを古く見せている偽物のように見えてしまうのですが、本物でしょうか? 最近、偽物を本物として展示している店があったものですから…。(同様の質問は4件ありました)

A.

薬師寺での展示物は本物です。
鎧の鉄片をつないでいる組糸は、絹(シルク)で出来ています。
絹は時間とともに加水分解を起こしボロボロになり、150年ないし250年経つと握っただけで切れるほど分解が進みます。
本鎧の糸は加水分解の進み具合から150年ほど経過していると考えられます。
また、漆の酸化の度合い、漆が剥がれたところに付着する錆の分析などからも100年以上経過しているものと考えて良いでしょう。
その他、塗料の退色変化など様々な分析の結果、江戸時代末期の作と考えて良いでしょう。
ただし、兜の部分はさらに古く、室町時代の鉢(鉄兜)が使用されています。
本鎧の製作に使用されている組糸、漆、鉄、どれをとっても分析の結果100年以上の歳月が経過していると考えて良いでしょう。

Q.大倶利伽羅広光など日本刀を大切にしているというわりには、食卓の横に置いて毎日見ていたとか抱いて寝るなどは、刀に湿気を帯びさせたりすることであって矛盾していませんか?(同質問者多数)

A.

一般の刀剣油とは異なり、地肌も刃文もよく見える特殊なコーティングを施してあります。
少々の湿気では簡単に錆びません。10日や20日抱いて寝たぐらいでは全く錆びることはありません。
研究所ですので、通常の愛刀家の対処方法とはかなり異なります。
白鞘自体も加工してあり、通常の白鞘とは異なり、錆の原因にならないようにしています。(本項目は別のQで答えます)
また食卓の横といっても、一般家庭の食卓を思い浮かべられると困ります。
私どもの食卓は、一般家庭とは全く異なる状態ですので想像できないと思います。
空調も換気もハイレベルで、日本刀を含め種々のサンプルや美術品を置く棚もあります。
精密機械や医薬品原料も多種多様なものが置いてあります。
日本刀を出しておいても錆びたりする環境ではありません。
ご心配をおかけしましたが、ご安心ください。

Q.なぜ白鞘の中で刀は錆びるのですか? 保存中に油をきちんと塗っていたのに、錆が出てしまったという話を聞きます。

A.

白鞘や拵えは、木でできています。
木は植物です。窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の3つが植物の三大栄養素です。
硝酸イオン、リン酸イオン、カリウムイオンなどがそれらの主成分です。
硝酸カリウムは塩化ナトリウム(食塩)と同じ塩です。
木は水分も含みます。しかも極めて弱いものですが、一応弱酸性です。
すなわち、木には塩と酸と水が含まれます。
これに鉄が接触すると、当然のこととして錆びるのです。
当研究所では錆の発生速度を1/100以下にする処理剤を新開発し、白鞘を処理しております。
そのため、ちょっとやそっとでは錆は発生しないのです。

Q.なぜ刀を集めているのですか? 現在でも多数の刀を買い続けているのはなぜですか?

A.

名刀のコレクターの方は、大事業家であったり大病院の院長であったりします。
しかし、コレクターの平均年齢はかなり高いのが現状です。
愛刀家の手入れ方法では2~3年手入れをしないと錆が発生してしまいます。
環境が悪いと1~2ヶ月でも錆は発生します。
愛刀家(コレクター)の方々が定期的に手入れをして来たからこそ刀は光り輝き続けてきたのです。
しかし、病気などで入院されると、その間手入れができず錆が発生します。
後継者の方が刀に興味がない場合も、忘れ去られてしまい、いつの間にか錆が出てしまうのです。
刀はお茶碗のようにしまっておけば何とかなるというものではなく、手入れをし続けなければ保存出来ません。
このような理由から、手入れが出来なくなった刀は錆びる前に手入れ、保存のできる環境のもとへと移さなければいけません。
そのため、出来るだけ早期に買い取り、手入れをするようにしています。レスキューの意味も大きいのです。
世の中には様々なボランティア活動がある中で、このような形のボランティアがあってもいいかなと思い集めている側面もあります。

【3/25更新】

Q.同じ時代、同じ作者、同じ作風で、どうして10倍以上の価格差があるのでしょうか? ネットを見ていても理解ができません。

A.

1.

価格展を考えて実物で解説したいと思います。

2.

作った時点での形を健全に保っているものほど高いです。短く作りなおしたり、研ぎ減ってしまい痩せている刀は安くなります。他にも研いで表面の硬い鉄が減って軟らかい地鉄(じがね)が出てしまっているものも安くなります。よく言葉で使われる地鉄(じがね)が出るというのは、ここから来ています。刀から来た言葉は結構使われています。

【3/22更新】

Q.沸(にえ)出来と匂(におい)出来の他にも小沸(こにえ)というものがあるそうなのですが、どのようなものですか?

A.

刀の切れる部分の組織が粗いもので、肉眼で分かりやすいものを沸(にえ)、肉眼では粒子を判別しづらいものを匂(におい)といい、その中間くらいを小沸(こにえ)と呼んでいます。
※小沸(こにえ)については後日写真で解説させていただきます。

Q.ハバキは何に使うものですか?

A.

鞘の中で刀身を固定し、かつ鐔(つば)を強く固定する役割を持ちます。
鞘から抜け落ちなくするための金具で、刀に合わせて一つ一つ作られます。
ハバキを作る職人を「白銀師(しろがねし)」といいます。
ハバキには二重ハバキや金無垢のものなど様々な形状、素材のものがあります。
日本刀に付属する他の金具と比べると装飾性は薄いが、実用的な意味でとても重要な役割を担っています。

【3/21更新】

Q.短刀と脇差と刀の区別は?

A.

刃渡り(実際に刃のある部分の長さ)で決められています。
30㎝までを短刀、脇差は30㎝~60㎝未満、刀は60㎝以上とされています。

Q.刀で長いものと短いものがあるのはなぜですか?

A.

戦い方などによって長さが異なると考えられています。
馬に乗って上から振り下ろすには、長い刀が有利です。
片手で鞘から引き抜いて戦うには、長すぎると抜けきれないため、ある程度短くないと不便です。
長いものでは刃渡り90㎝~1m以上のものもあります。
打刀(うちがたな)といわれる短いものは60㎝~70㎝が主流です。

Q.茎(手に持つ部分)に穴が1つではなく2つ、3つ、4つと開いているのはなぜですか?

A.

理由はいろいろありますが、主な理由はこの2つです。

1.

拵え(こしらえ)の柄の部分に合わせて穴が開けられるためです。刀は何百年も保ちますが、拵え(こしらえ)は雨や摩擦、またぶつかったり汚れたりして使えなくなる消耗品です。拵えを変えると新しい柄に合わせて穴を開けるため、穴が増えます。

2.

長い刀の方が有利な時代(南北朝時代まで)の太刀を打刀にするため、茎(手に持つ部分)の方から切断して短くします。
そのため柄と穴の位置が合わなくなり、新しく穴が開けられるために穴が増えます。
なお、このように短くすることを磨り上げ(すりあげ)といいます。
※磨り上げについては後日図で説明を加える予定です。